マルクの眼

千字一夜

我が同窓

ノンケのチンコを食うかもしれない。

こういう話をするとウッとなって即座に読むのを止めてしまう人がいるけど、まあそれでもいい。そのノンケは私の高校の時の友人で、思えばもう10年の付き合いだ。年2回、夏と冬に会っている10人の友人の内の1人で、仲がいい。彼は昔からいじられキャラだが頭がいいので自分から笑いをとっていくことも多く、学年でも有名人だった。僕と彼の関係はなんとも言い難いが、ベクトルは違うもののお互いに面白い人間だと思っているので、会うたびの情報交換は一つの楽しみになっている。

ストレートで慶應の理工に合格し、企業偏差値63の会社に就職した自称"4K"(高身長・高学歴・高収入・慶應)の彼だが、宿命のライバルがいる。学生時代から陸上のタイムやテストの結果などで事ある毎に競ってきたそのライバルは、奇しくも慶應経済・企業偏差値61に就職という似たような経歴を辿っている。ライバルは一浪で身長も高くないが、性格が良く人徳があるのでいつも人の輪の中心におり、付き合いの長い彼女がいる。実のところ彼ら2人は仲が良いのだけれど、我々仲間が2人の競う姿を楽しみにしているので、お互いが「お?ビビってんのか?笑」と挑発しあってプロレスをしてくれるのだ。

2年前に集まったときは4Kにも彼女がいたので「彼女のスペックで競え」と我々外野は囃し立てたけど、流石にそれはゲスすぎて実現はしなかった。その代わりに今後の彼らの人生で「学歴・年収・家・妻・子」の5種目を競う「人生五種」が始まった。学歴については浪人なし理系の4Kに軍配が上がり、年収は拮抗。なかなかいい勝負になりそうで、また集まる楽しみが増えた。

ところが先日会った時、4Kに元気がなかった。我々の集まりとは別に数日前クラス会があり、そこでライバルが結婚発表をしたらしい。私は諸用があって欠席だったので知らなかったが、交際期間の長さを考えればさして驚くこともない。だが4Kにはショックだったようだ。その近況報告の流れで、誰からともなく最近は性欲減退が著しいという話が出た。それぞれ自慰の回数が減ったとか勃ちが悪くなってる気がするとか。ノンケの下ネタにただ共感するだけの自分も悲しかったけれど、自分だけじゃなかったことに安心もした。ただ、4Kは元々性欲が強かったので、多少衰えた今も毎日致してしまうらしい。それが4Kにとっては許せないようで、「毎日30分から1時間かけてネタを探して致して得られるものが何もない。この時間を資格の勉強に使えばもっと出世できるはずなのに。だからもうチンコ取りたい。」と。「取ったら子ども作れないだろ!宦官になるつもりかよ?!」と総ツッコミを食らうものの、「30歳までに彼女がいなかったら、もうその後も無理だろうからいらない。後悔しない。」と曰う。そうしたら仲間の内のバカが「じゃあ、ちゃんとルール作ってそれに達しなかったら去勢しよう。取ったモノはその心意気に応えて俺らで食って供養しよう」と言い出した。そして決まったルールが「30歳の誕生日までに彼女がいなかったら睾丸を摘出する。但し、その彼女は付き合って半年以上でないと審議が必要になる。また、誕生日から遡って半年以内に彼女と別れていた場合は去勢は保留し、審議とする。追加ルール:睾丸の摘出は30歳の誕生日に1つ、31歳の誕生日に1つとする。31歳時のルールについては前項と同様。」

我々はその立会人・審議官として彼を監視する。彼が睾丸を摘出したら、見栄えも考えて代わりに陶器で作った疑似玉を入れることになった。その疑似玉は我々友人一同が1人1つずつ作成し、名前を彫る。そして入れる本人にどれがいいか選んでもらう。選ばれたら光栄だ。自分の名前が彫られた疑似玉が友人の体の一部になるなんて。ちなみに摘出は我々の身内の医師にしてもらう。摘出後のモノをどう調理するかは決めていない。

まあ全て冗談なのだけど。友人が人生五種に残れるのか、それとも異次元のゲームが始まってしまうのか。僕はどうにかして4Kに彼女を作ってあげたい。ノンケのチンコが食べたくない。