マルクの眼

千字一夜

近畿地方のアレの背景考察

 

久々に力の入ったホラー小説を読んだ。

面白い。粘度のある恐怖と、続きを読ませる展開はネットで読めるホラー小説としては白眉だと思う。

それ以上に、全体構成や要素の随所に私が好きな怪談・小説の影響が見えて、そのことに喜びというか静かな興奮を感じている。

 

以下、似ていると感じた話と、似ている要素をざっと書き出し。

 

・ヒサルキ

ヒサルキ : ヒサルキ まとめ

怪談や目撃談など、無関係に投稿されたはずのネットの書き込みに何らかの繋がりが見えて怖い。近畿地方の〜の全体にこれの影響を感じる。

山に棲むもの 憑くもの 子どもの遊び

 

・ヤマノケ

もうこれについては、説明するまでもない…

女・子どもが狙われる 山に棲むもの 憑くもの

 

・くねくね、邪視

これも、もう、ね。

山に棲むもの 見たら狂う系

 

思い出して追加

・SOSやめてください

SOSやめてください|【恐怖】怖い話

私はこれがすごく不気味で怖い。

集団ヒステリー

 

・巣くうものシリーズの「印」

2chの怖い話「巣くうもの」|恐怖の泉

洒落怖の名作、巣くうものシリーズ。怖くないのに面白い。

山の神が女に執着する 輿入れ

 

・妖怪の猿神

https://ja.wikipedia.org/wiki/%25E7%258C%25BF%25E7%25A5%259E

江戸時代以降の「しっぺい太郎」伝承が有名だが、そもそも猿神=山の神が嫁(女の生贄)を求める話は平安時代からあり、古い。

 

・ミゆキサンにツイテ

【洒落怖】加茂前ゆきちゃん行方不明事件「ミユキ カアイソウ」 | サンブログ

これも有名すぎるほど有名。怖い話ではなく実話なのが、より怖い。

近畿地方の〜」の中にあった、これオマージュみたいなエピソードは、ちょっと文体が苦しくて笑ってしまった。常識人にこういう文章を書くのは難しい。

 

・ごうち

本当にあった2chの怖い話 : 【洒落怖】児地

笑うくらい創作臭い話だけど、土地全体が呪われてる系の話では印象に残ってる。

住人が次々に死ぬエリア

 

・学校のコワイうわさ 花子さんがきた‼︎ 「死にたくなる団地」

子ども向けのアニメの1エピソードだけど大分トラウマ。内容はタイトルからお察しの通りで、要素は似ている。

住人が次々に死ぬエリア

 

・廃墟関係

廃墟に女が〜その後何度も視界に現れ〜夢にまで出てきて〜一緒に行った友人は行方不明に〜みたいな展開はオカ板で見すぎてキリがない。

安価で屋敷を探索するエピソードの中の、机からものを取り出す、何かを見てしまう部分は、これか。

禁后

2chの怖い話「禁后 -パンドラ-」|恐怖の泉

 

ヒサルキと並んで、作品全体に漂う雰囲気に「忌録」の影響を強く感じる。特に謎のシール(ステッカー)の話は「光子菩薩」に似ていた。

そしてオカルト雑誌の編集・記者が登場するといえば、比嘉姉妹シリーズ!

 

近畿地方のアレは、こう、なんとなく元ネタが分かるような分からないような、既視感のあるエピソードが多い。でもそれはパクリとかネガティブなことよりも、オカ板あるあるを感じさせるという意味で非常にうまく作用している。

むしろ、こういう群話的な構成で、全く目新しいタイプの怪談ばかりが並ぶとかえって怪しいというか、創作臭が強くなる。これまで散々見たような話に、新しい要素が1エッセンス、串が1本通ることで、読者の引き込みを強くしていると私は感じた。

合間あいまに狂言回し的なメタ構造があるのも面白い。

完結したら内容の考察もしてみたい。

 

 

真面目な話

 

政治の話をする。

同性婚で社会が変わってしまうらしい。「変わってしまう」という言い振りに、逆に「今の社会を変えたい!」みたいな志ってないんすねー、と思った。

民心は岸田宰相から離れ、もはや内閣に何か大きなことを実行する力はなく…。そこで「極めて慎重な検討」即ち「"何もしない"をする」ことで、保守層からの支持率をちょこっと上げにきた。プーさん戦術というわけだ。

考えてみれば、岸田氏は社会を変化させないためにお金を費やしている。ウクライナ支援も台湾有事への備えも現状変更を嫌ってのことだし、気候変動対策もそう。コロナ対策や原発再稼働を見ても、「今の社会を維持するためですよ〜」「元の社会に戻すためですよ〜」と言われれば金を出す人、という印象を受ける。

それを保守だと言えばそうなのかもしれないし、ある意味で一貫している。が、努力すれば今の社会を永遠に維持できると信じているのならば、そしてそれが好ましい/望ましいと思っているのならば、大した夢想家だ。換言すれば愚か者である。

たま〜に「急激に変化する時代に対応すべく」の枕詞でデジタル化がどうとか、女性活躍がどうとか言うが、「(変化しないならそれに越したことはないんだけど)」という後ろ向きな本音を行間に滲ませて仰るので、そんな言葉で誰が乗り気に/前向きになれるのか、甚だ疑問だ。何も起きなきゃいいんだけど〜みたいな感じは、防衛費だけにしてほしい。戦争は起きなきゃいいに決まっている。

岸田殿というか自民党が唯一、何か変えようとしているのは憲法くらい?先の発言と勘案するに、改憲は社会を変えることにあらずと見えり。

さて話を戻す。岸田氏の同性婚関係の発言はなかなか注目されたらしく、Yahoo!ニュースではコメントがやたら多かった。で、やはり目に付くのが「少子化が」という意見。ほら、ひろゆき言ってやれよ。ソースは?それってあなたの(ry←これなつかしい

同性愛者から提言したい。社会全体の雰囲気が〜とか漠然としたことを言うなら、国民にアンケートを採ればいいじゃないか、マイナンバーを使って。

子どものいる既婚者には、「もしあなたが同性婚を認める社会に生まれていたら、今と同じように異性婚を選択したと思いますか?」「今と同じように子どもを持ったと思いますか?」

その他、子どものいない20・30才代を対象に、「この先、子どもを生みたいと思いますか?」「思わないと答えた人に伺います。同性婚を認める社会でなら子どもを生みたいと思いますか?」

これで、同性婚がどれだけ出生率に正負の影響を与えるのか、数値として見よう。

あーあ。いつの間にか、社会を変える力を得てしまったアタシたちって…ウテナなのかもしれない──。

 

 

おわり

 

 

 

感傷録 221127

 

◎アプリ管理

スマホの見過ぎ/スマホ依存によって記憶力の低下や意識散漫が起きるという。それは事実だろう。身をもって知っているから。ならいっそ、全ての記憶/記録をスマートフォン上に残して、クラウドに保存しようと思った。

手始めに、在庫管理アプリ的なものをスマホに入れ、家にある郷土玩具やら骨董を登録した。古書籍は始めたら一仕事なので、休日一つを潰す覚悟がまだ出来ない。

文章やリンクも登録できるので、今までメモ帳に書き留めていたレシピもこちらに統合しようと思う。

ゆくゆくは記憶力を失い、感性で気に入ったものを選別して入力するだけの機械になるだろう、私は。

 

◎日記

電脳化計画の一つとして、その日あった出来事を時系列で記録する、いわゆる日記を付けようかと思ったのだが、それにどのくらい意味があるのか、果たして自分は後で見返すのだろうか…?と、始めないための消極的な理由ばかり考えてしまう。

じゃあブログで公開するか?でも仕事に関することは何も書けなくなる。それに「日記なんて他者に見せるものじゃない」と心無い人は言うだろう。

でも、そもそも日記とはその名の通り日々の記録であって、子孫に自分の経験や感覚を伝えることを目的として記されるものだ。御堂関白記然り、小右記然り、紫式部日記然り。平安後期の貴族は、祖先の日記のある/なしが家の格や出世に影響したほどだった。でも子孫ができる見込みはない。それはさておき…。

それほど波風のない人生かつ最近は誰に会って何したということをSNSに書くことさえ躊躇われるので、そんな情報の抜け落ちた面白くもない日記を公開することはないだろう。

強く心が動いた時は短歌を詠み、長文が書きたい時はブログにてお知らせします。

 

◎交換日記

友人と交換日記ブログをしていた。もう、過去形である。当初から、(これは続かないな…)と予感めいたものを感じていた。ほら、案の定である。

私のターンでは終わらなかったのは幸いだ。向こうが書かないまま終わった。私には何の責任もないと胸を張って言える。先方のそういう気遣いかもしれない。いや、嘘です。

 

Twitter

最近Twitterが見づらくなってきたし、いつ何があるか分からないので、ブログだけでも稼働できるようにしておきたい。ツイートの頻度は落ちているとはいえ、ほぼ日課になっている短文投稿ができなくなるのは恐ろしい。

Twitterを見るのやめたいと思ったこともあったのに、Twitter自身がTwitter離れを促してくれるとは皮肉なものだ。最近は謎にフォロワーが増えたのだが、いいねしてくれるのはいつメンだけ。さすがツイッター・ファミリー。みんなズッ友だよ。

ああ卒業しても友達ね

それは嘘では無いけれど

でも過ぎる季節に流されて

逢えないことも知っている

 

 

美鈴相談室

こんにちは、"ありがとうの杜 美鈴相談室"です。

 

──あ、もしもし、あの、私、相談があって聞きたいんですけど…家のこととか、家族のこととか、私それで、あの、

 

ええ、はい、大丈夫ですよ。ちゃーんと解決できるように、美鈴が導きますよ。まずは落ち着いて、カーム・ダウン。はい深呼吸。吸って、吐いて、吸って、吐いて。ハァーーイ!

はい、今ね、私の心を貴方に寄せました。大丈夫そうね。じゃ、無事"心頼"が出来たところで。御家族のお話ね?まず、貴方のお名前から聞かせてちょうだいな。

 

──はい、ワクチンです。

 

ワクチン?

 

──はい。ワクチンです。

 

ええと…お悩みがワクチンについて、ということ?

 

──あの、だから、ワクチン、なんです。

 

分かりました。じゃ、ワクチンの話は後でするとして、先にお名前だけ教えてちょうだいな。貴方をお名前で呼びたいの。

 

──だから、あの、名前がワクチンなんです。

 

名前がワクチン。

 

──はい、ワクチンと申します。

 

ワクチン、さん。ええと、それは上、下?

 

──というと?

 

上のお名前がワクチンなの?それとも下のお名前?

 

──…ごめんなさい。名前に上とか下とか考えたことがなくて…。私なんか、たぶん下の方だと思います。

 

そうじゃない!あ…ごめんなさいね。いえ、そうじゃなくって。ワクチンは御名字?それともお名前?

 

──ごめんなさい…よく分かりません。

 

よく分からない!?ど、どうしてなの?

 

──えっと、うちは昔から父が厳しくて、何をするにも、あの、ぜんぶ父に聞いてからでないといけなかったので…たぶんそれで、上の名前とか下の名前とか無い、んだと、思います。多分…。

 

嘘!?ええと、学校ではどうしてたの?

 

──えっと、あ、私、長いことセンターのボックスに入っていたので…ちょっと…

 

……ま、まあ、いいです。ワクチンさんは女性よね?年齢を教えてちょうだいな。

 

──34です。

 

はいはい、34才ね。御家庭のお悩みということで、家族構成もいいかしら?

 

──父と、弟が二人います。

 

それぞれ御年齢は?

 

──父は分かりません。弟は72、65です。

 

えーと、弟さんのほうが年齢がだいぶ上ですけれど…

 

──それも父が…私は個体値があまり良くなかったみたいで、育てるのが後回しになったんです。

 

ポケモン!?貴方たち家族、ポケモンなの!?レベルの話してたの!?さっき言ってたセンターのボックスって、ポケモンセンターのパソコンで預けるボックスのこと!?

 

──ポ、ポケ…??知らない言葉です…。

 

………。一応伺いますけど、冷やかしではないのよね?

 

──え、え、私!本気で悩んでいるから相談したかっただけなんです!なんでも相談に乗ってくれるって、電柱の紙に書いてあったから!

 

ああ、ごめんなさい。気を悪くしないでちょうだいな。念のため、あくまで念のためなの。もう美鈴は貴方を信じます。ごめんなさいね。

じゃ、質問の続きね。お住まいの場所を教えてちょうだいな。

 

──カントー地方です。

 

本当に信じていいのよね?

 

──はい?

 

もう、いいです。分かりました。

 

──えっと、悩みの話をしていいですか?

 

ええ、はい。そうそう。一応ね、先に説明しないといけない事があるの。聞いてね。

お悩みの内容によって、美鈴の解決方法が違います。すぐに解決出来そうなお悩みなら、この電話口で遠隔の心波を送ります。お時間がかかりそうなら、心石を送って心石付き合いをしないといけません。それぞれね、すこーしお金がかかってしまうかもしれないので、そんなことがあるかもね〜という可能性が少しだけあるという事だけね、万が一にもね、頭の片隅に置いておいてちょうだいな。いいかしら。

 

──よく分かりました。よろしくお願いします。

 

そう?ありがとうね。じゃ、お悩みを聞いていこうかしら。

 

──は、はい。実は、父がジムで水泳をやっているんです。それで、少し泳ぐとすぐにゴーグルが曇ってしまうらしくって…。大阪人はたこ焼きを作る時に油を塗るアレでクルッと中を拭って曇り止めにすると聞いたんですが、本当ですか?

 

ガチャ プープープー

 

──………。

 

 

最近買ったもの

最近買い物をしたんで、買ったものを見てもらいたいんです。これなんですけど。

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そう。この、なんとも言われぬ、ころころっとした感じが実に愛らしいでしょう。一目惚れというやつで、あんまり衝動買いをしないタイプの私なんですが、まぁ、買ったわな。買わされた、と言ってもいい。多元宇宙のご意志です。

ご存知の通り、現在の私の経済状況からすればこんなものを買って乗ったり眺めている状況ではないんだけれど。こういうタイプの出会いを見過ごしてしまい、数年経ってから(あの時買っていれば……)と返すがえすも後悔、という経験が沢山あるので、エイヤと買った。買ってしまった。高かった。涙

買わなかった後悔は消えないが、買った後悔は買値を忘れたときに消える。はず。

ああ、どの角度から見てもストーリーがあって愛しい。周って色んな角度から眺めては、「案外無骨なのね…」とか「なんという透明感…美しい…」とか惚けたゴラムのような顔で呟いてる。デブのホビットに盗まれるのを警戒してる。その愛しいしとの横顔がこちら。

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今でこそ滅多に見ないけど、昔はこういう類が結構色々なバリエーションで作られていたと聞く。物が物なので全市民的普及というよりも店舗向けだろうけど、中規模都市の電話帳や商店便覧を見ると数軒は製作所があったりするので、作っていたのは本当だろう。しかし、見ない。現存数が極端に少ない。バリエーションも私は5種類くらいしか知らない(ネットの画像情報含め)。現在はすっかりロストテクノロジー化していて、もう作れないのだろうし。実用的じゃあないが、惜しい。

こう、手にした時の質感や馴染みって、古い物の方が良く感じる。単に年季が入っているとかノスタルジックな感傷ではなくて、布とか木とか金属の成分?組成?の違いもあるように思う。昔の方が基本的に素材は上質かもしれない。だから、仮に今の技術でこれと同じものが作れたとしても、同等の魅力を感じない自信がある。もちろん私が骨董好きなのもあるんだけど。

なかなか気軽にリュックに入れて持ち歩けないし、デブのホビット(盗人の隠語)が怖いので、見たい人は私の自宅までお越しください。お手にとってご覧ください。歓迎光臨。

最後にちょっと加工して生で見た感じに色味を近づけてみた。ゆうて自宅の蛍光灯の光なので、本当は日光の下で撮った方が盛れるんだろうな〜。撮影会とか……したい……(近所限定)。

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おわり

弊社所属タレントに関するお詫びとお知らせ

 

報道関係各位

弊社所属タレントに関するお詫びとお知らせ

 

平素は格別のご高配を賜り、誠に有難うございます。

弊社所属タレント 小串らむ(おぐし らむ・27才)につき、ご報告申し上げます。

週刊誌等で報道の通り、過日、小串が出演したバラエティ番組において披露したエピソードが虚偽ではないかと、放送後より多くのご意見をいただいておりました。一昨日、小串に聞き取りを行ったところ、番組出演にあたって担当マネージャーと事前に打ち合わせし、創作した内容を事実かのように番組内で発言していたことが判明いたしました。

弊社では、昨今のメディアにおける所謂「ヤラセ」問題を鑑み、専門家を招いたコンプライアンス研修を所属タレントに向けて行うなど、日頃より所属タレントおよび社員に対してコンプライアンスの徹底を図ってまいりました。

しかしながら、今回、弊社タレントと社員が共謀して捏造を行い、このような事態に至ったことは極めて遺憾であり、その責任を大変重く受け止めている次第です。応援してくださるファンの皆様や関係者の皆様に対して、平にお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。

当人達は深く反省しており、今後はこのような事がないよう心を入れ替える決意でおります。弊社としては、小串らむを無期限の謹慎、連帯責任として所属グループは活動を一時休止とさせていただきます。当該マネージャーにつきましては、厳重注意の上、担当交代の処分を行っております。

本件を重く受け止め、改めて社員・タレントへの指導・教育を徹底し、再発防止に努めて参りますので、引き続き、ご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 

株式会社アーリオ・オーリオ エンターテイメント 

 

 

以下、本人コメント▽

 

「このたびは、私の身勝手な行動で多くの方を傷つけてしまい、いつも応援してくださるファンの皆さんやお仕事関係の皆さん、そして家族に心からお詫びしたいと思います。ほんとうに申し訳ありませんでした。

まず、今回の件に至った経緯を説明させてください。先日の出させていただいたテレビ番組が、私にとって地上波の初めてのお仕事でした。とても緊張して社員の方に相談したところ、フリートークで披露するエピソードは強いものが必要という結論になりました。それで話が出たのが、あのチョリソーの話でした。

スタジオで私は、「ソーセージとチョリソーの違いは、ソーセージは普通のブタから作られて、チョリソーは辛い種類のブタから作られてると思ってた」「唐辛子だけ食べて育てられた辛い種類のブタがいると思ってた」「チョリソーに唐辛子が入ってるの見えなくないですか?」と言いましたが、これがあらかじめ考えたエピソードでした。放送後にツイッターやインスタ等で「嘘」と言われ炎上していることを社員の方から教えられ、驚いたと共に、家族からも「辛い種類のブタの話をさせるために大学までやったんじゃない」とLINEで叱られ、事の重大さを思い知りました。

また、全国のチョリソー生産者の方、ブタ農家の方にも、私が存在しないブタの話をして国民の誤解や混乱を招いてしまったことを、申し訳なく思っています。

今後はこのような事件を起こさないよう心を入れ替えて、社会人としての自覚を養い、一本芯の通ったものとして生まれ変わって精進していきます。このたびは、ほんとうに申し訳ありませんでした。

ARROS☆TICINI 小串らむ 」 

 

新訳山月記

 

同性愛者の遼介は博学多才、中学二年次 県美術コンクールで入賞、高校は地方の進学校に入学し吹奏楽に励んだが、性格は傲慢、自尊心が強く、サラリーマンで人生を終えることを潔しとしなかった。芸術の道へ進むと決めた後は、都内の有名美術大学へ進学し、ひたすら制作に励んだ。サラリーマンとなって長く頭を俗悪な上司の前に垂れるよりは、芸術家として自由で洒落た生活を送ろうとしたのである。

しかし美大での成果はなかなか揚がらず、卒業は目の前に迫っている。遼介は漸く焦燥に駆られてきた。この頃からその容貌も険しくなり、肉落ち骨秀で、目付きのみ徒らにギョロギョロとして、かつて北上尾で生活した頃の神童の美少年の面影は、何処にも求めようもない。数回の留年の後、周囲の圧力に堪えず、生活のために遂に節を屈してサービス業に就職することになった。一方、これは、己の才能に半ば絶望したためでもある。高校の同窓は都内で就職し遥か高所得となり、彼が昔、俗悪だと歯牙にもかけなかった同性愛者から同衾を拒まれることが、往年の秀才遼介のプライドをいかに傷つけたかは、想像に難くない。彼は東京を楽しまず、狂悖の性はいよいよ抑え難くなった。

一年の後、研修で大阪に出、梅田近くのホテルに泊まった時、遂に発狂した。或る夜半、急に顔色を変えて寝床から起き上がると、何か訳の分からぬことを叫びつつそのまま廊下へ飛び出して、闇の中へ駆け出した。彼は二度と戻って来なかった。友人がツイッターで情報を呼びかけても、何の手掛かりもない。その後、遼介がどうなったのかを知る者は、誰もなかった。

 

翌年、同性愛者、文京区の悠太という者、友達と新宿で飲み過ぎ、行き着いたハッテン場に宿った。薄暗い店内に出発しようとしたところ、受付の若者の言うことに、今日は空いているから、あまりいい人がいないかもですね、と。悠太は若者の言わんとすることを悟ったが、ここへは寝に来ただけだからと、色目を振り払い、迷路に足を踏み入れた。

僅かな照明を頼りに空いた個室を探していった時、果たして一人の男が暗闇から手を伸ばした。男は二の腕を掴んだが、振り返った悠太の顔を見て、忽ち身を翻して個室の中に隠れた。個室の中からくぐもった声で「あぶないところだった」と繰り返し呟くのが聞こえた。その声に悠太は聞き憶えがあった。不愉快の中にも、彼は咄嗟に思い当たって、叫んだ。「その声は、我が友 遼介ではないか?」悠太は遼介と同じ頃に東京で暮らし始め、友人の少なかった遼介にとっては、数少ない親しいゲイ友であった。温和な悠太の性格が、気難しい遼介の性情と衝突しなかったためであろう。

個室の中からは暫く返事が無かった。店内のBGMが虚しく響くばかりである。ややあって、低い声が答えた。「いかにも自分は北上尾の遼介である」と。

悠太は酔いも忘れ、個室に入って影に近づき、懐かしげに旧友に話しかけた。そして、なぜ顔を見せてくれないのかと問うた。遼介の声が答えて言う。自分は今や異形の身となっている。どうしてモテ筋の友の前にあさましい姿を晒せようか。かつ又、自分が姿を現せば、必ず君に嫌悪の情を起こさせるに決まっているからだ。しかし、今、図らずも友に遇うことを得て、遠慮の気持ちをも忘れる程に懐かしい。どうか、ほんの暫くでいいから、我が醜悪な外見を厭わず、かつて君の友遼介であったこの自分と話を交えてくれないか。

後で考えれば不思議なことだったが、その時、悠太は、この偶然の再会を実に素直に受け入れて、少しも怪しもうとしなかった。酔いの覚めた彼は、入り口の傍に座って、見えざる声と対談した。都の噂、フォロワーの消息、悠太の現在の生活、それに対する遼介の祝辞。20代に親しかった者同士の、あの隔てのない語調でそれらが語られた後、悠太は、遼介がどうして失踪に至ったかを訊ねた。薄闇の中の声は次のように語った。

今から一年程前、自分が社員研修で梅田あたりに泊まった夜のこと、MNJで出会った男と致してから、ふと眼を覚ますと、誰かが我が名を呼んでいる。声に応じて外へ出て見ると、声は闇の中から頻りに自分を招く。覚えず、自分は声を追うて走り出した。 無我夢中に駆けて行く中に、いつしかあたりが赤くなり、しかも、知らぬ間に自分は左右の手を掴まれていた。何かが身体中を押さえつけるような感じで、何処かへと運ばれて行った。気がつくと、手足をベッドに拘束されているらしい。少し明るくなってから、首を動かし辺りを見ると、病院に入れられていた。

自分は初め眼を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だぞと知っているような夢を、自分はそれまでに見たことがあったから。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分は茫然とした。そうして懼れた。両親を泣かせ、警察の世話になったのだと知って、深く懼れた。しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。何かも分らずに押付けられたモノを大人しく摂取して、理由も分らずに収監されるのが、我々ホモのさだめだ。

退院日、自分は直ぐに死を想うた。しかし、その時、眼の前で二人の男が公園の便所に入るのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。再び自分の中の人間が目を覚ました時、自分の手は体液に塗れ、あたりにはちり紙が散らばっていた。これが異常動物としての最初の経験であった。それ以来今までにどんな所行をし続けて来たか、それは到底語るに忍びない。ただ、一日の中に必ず数時間は、人間の心が還って来る。そういう時には、曾ての日と同じく、Instagramも更新できれば、複雑な思考にも堪え得るし、音楽やアートを楽しむことも出来る。その人間の心で、異常動物としての己の獣欲のあとを見、己の運命をふりかえる時が、最も情けなく、恐しく、憤おろしい。しかし、その、人間にかえる数時間も、日を経るに従って次第に短くなって行く。今までは、どうしてクソホモなどになったかと怪しんでいたのに、この間ひょいと気が付いて見たら、己はどうして以前、健全だったのかと考えていた。 これは恐しいことだ。今少し経てば、己の中の人間の心は、獣としての習慣の中にすっかり埋もれて消えて了うだろう。ちょうど、古い宮殿の礎が次第に土砂に埋没するように。そうすれば、しまいに己は自分の過去を忘れ果て、一匹のホモとして踊り狂い、今日のように街で君と出会っても友と認めることなく、君で抜きまくって何の咎も感じないだろう。一体、獣でも人間でも、もとは何か他のものだったんだろう。初めはそれを憶えているが、次第に忘れて了い、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか?いや、そんな事はどうでもいい。己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己はしあわせになれるだろう。だのに、己の中の人間は、その事を、この上なく恐しく感じているのだ。ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思っているだろう!己の人間らしい倫理のなくなることを。この気持は誰にも分らない。誰にも分らない。己と同じクソホモに成った者でなければ。ところで、そうだ。己がすっかり人間でなくなって了う前に、一つ頼んで置きたいことがある。セックスしてるところ見せてください!