マルクの眼

千字一夜

日本の皆様へ

このたび、2017年3月、ここ神奈川国立美術館を皮切りに、北は青森から岐阜、岡山、宮古島を巡る「大ヒモテ展-金と蜜の誘惑-」を開催し、我がヒモテ共和国が誇る至宝の数々を日本の皆様へご紹介できることは、私にとってこの上ない喜びです。

ヒモテの芸術文化は古代モテーナイ時代に萌芽し、ウェーイ人の移動、帝政ツラサ国の支配という動乱の時代を経て、初代王ビンタにより建てられた統一シュラン王国で花開きました。

14世紀、シュラン王国の首都であったゲロは、現在では花の都の別名で知られ、往時の芳しくも色鮮やかな貴族文化を伝える都市として全域が世界遺産に指定されています。ゲロのほぼ中央に位置する歴代ビンタ王の住居__サイゼリア宮殿を改装して造られたズツウィタミ美術館は、一年を通じ多くの観光客を迎える我が国随一の美術館です。その中でも毎年1500万人と最も来訪数が多いのは、親愛なる友人__日本の皆様です。日本の皆様の芸術への関心、知的好奇心、見識__これらに深い敬服の念を禁じ得ません。

日本とヒモテの間には多くの文化的差異があります。人種・言語・宗教・気性...__しかしながら、文化保護に対する情熱という一点に於いて我々は強く共感します。両国は古い文化と新しい文化の融合__あるいは衝突__これがごく小さなレヴェル・単位で発生し、独特の空気層を形成するのです。

奇しくも、本年は日本とヒモテの国交樹立からちょうど126周年に当たります。今より47年前、国交樹立79周年を記念して行われた「ヒモテ彫像展」では巨大なワビ石から彫り出された雄壮なヒモテの彫刻が多くの日本の美術ファンを魅了しました。このたびの「大ヒモテ展」ではこれに絵画を加え、より充実した内容であることをお約束します。

特に、本美術展の目玉である《路上で眠るベロベロ人》は今回が初来日となります。17世紀、4世ビンタ王の妻カエレン妃が、自身の寵愛した宮廷画家シューデンナイに描かせたと伝わり、実に177年の間、玉座の間を彩った風景画です。ビンタ家最後の当主となった11世ビンタ大公はその遺言に、この絵を含む全ての王家財産をヒモテ国に寄贈する代わりに一切の国外への持ち出しを禁じました。それは今日でも原則として守られていますが、今回は我が国と日本国美術館協会との間にある格別な信頼関係と協定に基づき、また両国の友好に資することを期して、遺言を違えての初来日そして初渡航となります。この点においても過去に例を見ない画期的な展覧会であることは間違いありません。

本展覧会が賢明なる日本の皆様の眼を楽しませるとともに、両国の親善と相互理解を深めるものと確信しております。この春、ヒモテの華やかな歴史と文化を日本でご堪能ください。

 

在日本ヒモテ共和国大使 イナイレキ=ネンレー