近畿地方のアレの背景考察
久々に力の入ったホラー小説を読んだ。
面白い。粘度のある恐怖と、続きを読ませる展開はネットで読めるホラー小説としては白眉だと思う。
それ以上に、全体構成や要素の随所に私が好きな怪談・小説の影響が見えて、そのことに喜びというか静かな興奮を感じている。
以下、似ていると感じた話と、似ている要素をざっと書き出し。
・ヒサルキ
怪談や目撃談など、無関係に投稿されたはずのネットの書き込みに何らかの繋がりが見えて怖い。近畿地方の〜の全体にこれの影響を感じる。
山に棲むもの 憑くもの 子どもの遊び
・ヤマノケ
もうこれについては、説明するまでもない…
女・子どもが狙われる 山に棲むもの 憑くもの
・くねくね、邪視
これも、もう、ね。
山に棲むもの 見たら狂う系
思い出して追加
・SOSやめてください
私はこれがすごく不気味で怖い。
集団ヒステリー
・巣くうものシリーズの「印」
洒落怖の名作、巣くうものシリーズ。怖くないのに面白い。
山の神が女に執着する 輿入れ
・妖怪の猿神
https://ja.wikipedia.org/wiki/%25E7%258C%25BF%25E7%25A5%259E
江戸時代以降の「しっぺい太郎」伝承が有名だが、そもそも猿神=山の神が嫁(女の生贄)を求める話は平安時代からあり、古い。
・ミゆキサンにツイテ
【洒落怖】加茂前ゆきちゃん行方不明事件「ミユキ カアイソウ」 | サンブログ
これも有名すぎるほど有名。怖い話ではなく実話なのが、より怖い。
「近畿地方の〜」の中にあった、これオマージュみたいなエピソードは、ちょっと文体が苦しくて笑ってしまった。常識人にこういう文章を書くのは難しい。
・ごうち
笑うくらい創作臭い話だけど、土地全体が呪われてる系の話では印象に残ってる。
住人が次々に死ぬエリア
・学校のコワイうわさ 花子さんがきた‼︎ 「死にたくなる団地」
子ども向けのアニメの1エピソードだけど大分トラウマ。内容はタイトルからお察しの通りで、要素は似ている。
住人が次々に死ぬエリア
・廃墟関係
廃墟に女が〜その後何度も視界に現れ〜夢にまで出てきて〜一緒に行った友人は行方不明に〜みたいな展開はオカ板で見すぎてキリがない。
安価で屋敷を探索するエピソードの中の、机からものを取り出す、何かを見てしまう部分は、これか。
禁后
ヒサルキと並んで、作品全体に漂う雰囲気に「忌録」の影響を強く感じる。特に謎のシール(ステッカー)の話は「光子菩薩」に似ていた。
そしてオカルト雑誌の編集・記者が登場するといえば、比嘉姉妹シリーズ!
近畿地方のアレは、こう、なんとなく元ネタが分かるような分からないような、既視感のあるエピソードが多い。でもそれはパクリとかネガティブなことよりも、オカ板あるあるを感じさせるという意味で非常にうまく作用している。
むしろ、こういう群話的な構成で、全く目新しいタイプの怪談ばかりが並ぶとかえって怪しいというか、創作臭が強くなる。これまで散々見たような話に、新しい要素が1エッセンス、串が1本通ることで、読者の引き込みを強くしていると私は感じた。
合間あいまに狂言回し的なメタ構造があるのも面白い。
完結したら内容の考察もしてみたい。