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マルクの眼

千字一夜

娯楽、あるいは喜劇として


友だちと旅行するとき楽しみなのは、夜やるトランプの大富豪。

イレブンバックや砂嵐などのローカルルールを含めてやるのも面白いけど、シンプルベストな最低限のルールでやるのが僕の好み。

5人くらいの面子だと、革命の確率はそこそこ低く、ジョーカーの行方も分かりにくい。
そして都落ちが起きやすい。

大貧民・貧民・平民・富豪・大富豪で構成される超格差社会
この中間層の薄さよ。

貧困層は富裕層に手札の強いカードを1枚ないし2枚差し出すというルールがあるけど、大変な搾取である。

あれを逆転させたらどうだろう。

勝者から敗者へ強いカードが渡されるルールだったら。

面白そうではあるけど、大富豪の都落ちは必至だ。
都落ちのルールとは両立できない。

また、もし都落ちがなかったとしても、そもそも全員に配られるカードは平等に運頼みなので、そこから強いカードが取られる時点で富裕層には大きなハンデがある。
貧困層の方が手札がよくなる逆格差だ。

従って、誰も富裕層になろうとしない。例えゲームに勝ったとしても、そんなハンデを負って続けたいとは思えない。
ゲームの破綻である。

自身の貧しさへの屈辱だとか富裕層への憧れが人を向上させ、富裕層である優越感や貧しさへの恐れが人を努力に導くんじゃないか。

恣意的に弱い手札が最初から配られたり、富裕層の搾取によってその後のゲームに取り返せないハンデが生じるのはよくない。

ただ、全き平等を作ろうと手を加えるのもおかしいし、ゲームの意義という根幹に関わる。
これもゲームを破綻させる。

「みんなが大富豪」という絶対的な豊かさを実現できない分、都落ちルールで定期的に大貧民を作り出し、強制的に貧困層を底上げする。
また都落ちを以って貧困層のカタルシスとする。

カードゲームだからできるシステムだけど、非常に優れている。

この大富豪というゲームには統治者はいない。
ゆえに、ゲーム開始前の合議によるルールの決定が必要不可欠。
あとはルールがプレイヤーを監視する。

卓上の空論もいいところだ。

議論が長引くのが不粋なので、僕はシンプルなルールを好む。